独ソ戦とシウマイ

最近はソ連とドイツがなぜあれほど残虐な行為に及んでしまったのか、もっと言うと体制が人権を無視した計画を実行に移してしまうのはなぜなのか考えることが多い。組織は歯止めがないと転がるように失敗を繰り返し、それを認めずに突き進むと破綻する。それの最も取り返しのつかない版がソ連とドイツの事例だと思う。中国も文化大革命でそうなったにも関わらず、持ちこたえて今の繁栄につなげた。数多くの人が犠牲になって、同じ犠牲を繰り返さないために歴史から学ぶ必要があると思い、歴史関係の新書を読むことが増えています。

最近話題になった大木 毅独ソ戦』。 

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 (岩波新書)

 

タミヤのプラモデルで育った世代は、自発的に学ばなければあの頃の記憶で第二次世界大戦のイメージを作り上げている。しかし、21世紀に入って資料解読が進み、戦術的な数々のターニングポイントが分かってきて、従来のヒトラーが全部悪いとしてきた考え方が変わってきているという。

とはいえ負けたには変わりなく、ドイツがフランスの時はあっさり勝てたのに同じ作戦を使ってソ連を落とせなかったのはなぜかということが書かれている。ヒトラーがわざわざソ連を攻撃した理由に、通常の戦争や物資を収奪するための戦争ではなく、ソ連を植民地化してゲルマン人の土地とし、(彼が劣っていると考える)スラブ人はシベリア送りにするという勝利後の世界を描いていたことがあげられている。その世界観を実現するためには、仲間の撤退を許さず、兵站も考えずに突き進む。当初は軍とヒトラーの権限が別だったので作戦もスムーズに行えていたのが、ヒトラーの力が絶対となって軍を直接指揮するようになってからは負けが続く。

この、調子が良い、自分は負けるはずがないという思い込みが多方面に展開した結果、自分の手に負えなくなって敗北するというのは今も昔も変わりないように思います。最近だと参議院に当選してNHKを敵対視している方。当選したことで自分の行いを正義と思い込み、テレビタレントや企業にまで敵対行動を広げるようになった。この考え方はヒトラーと同じように、自分の世界観に合わない勢力に勝利して屈服させることが目的に思われます。

フランスや東欧あたりで戦端を留めておけばヒトラーの運命は変わったかもしれません。ソ連という大国を見くびったことでナチスドイツの運命は大きく変わってしまった。同様に、食について親身に考える日本人に対して不条理とも思える敵対行為を行った方は、いずれ梯子を外されるように見えます。目立つことと、人々の隠された不満を顕在化して味方に付けることは必ずしも一致しません。「戦わなくてもいい相手を敵に回すことは大きなリスクである」。信長の野望姉小路が生き延びるのが難しいことに似た構造に思えます。